次期愛車への道 マツダ アテンザ XD
「次期愛車への道」も3台目。
今回試乗したのは、マツダのアテンザ。
'11年のモーターショーで展示されていたコンセプトカー「雄(TAKERI)」のイメージを極限まで市販車に反映させたアグレッシブなデザインとなった。
あ、そこの人、「3シリーズに似てる」なんて言わないこと!
"SKYACTIVE" と名付けられた新世代技術をフルに詰め込んだ、マツダ渾身のモデルである。
最近の日本車は、余程のスポーツモデルでもない限り MT 車の設定が無くなりつつあるが、アテンザではしっかりと 6MT 車がラインナップされている。
残念なのは、その MT 車がディーゼルの XD(クロスディー)というグレードにしか設定がないこと。
「ディーゼルは重くて鈍くさい」という従来のイメージを払拭し、新世代のスポーティユニットとして売りたい戦略が明確に見える。
ただ、世界でもトップレベルに躍り出たガソリンユニット、SKYACTIVE-G との組合せで乗りたい人も少なくないはずなので、今後のバリエーション展開に期待したい。
パワーユニットは、SKYACTIVE-D と呼ばれる新世代クリーンディーゼル 2.2L ターボ。
圧縮比 14 という常識を覆す低圧縮比が最大の売りで、低圧縮によりエンジン各部の剛性を下げることができるので摩擦損失が大きく減少し、低燃費を実現している。
ディーゼルで圧縮比を下げると、低温時の始動性に大きく支障が出てくるが、セラミックグロープラグと2000barの高圧ピエゾ式インジェクタの採用でそれを克服している。
トランスミッションは、これも新たに設計された SKYACTIVE-MT と呼ばれる 6MT。
「手首の返しだけで操作できる」というカタログ中の謳い文句は大袈裟ではあるが、節度感を持って小気味好く各ゲートに入っていく。
リバースの位置は1速左側で、シフトレバーを垂直方向(軸方向)に下へ押し込んで入れるタイプ。
エンジンのスタートは、プッシュボタン式。
軽くワンプッシュで完爆までスタータを保持してくれる。
では、クラッチを踏んで1速に入れて発進。
クラッチペダルは重くはないが適度に踏み応えがあり悪くない。
圧縮比が低いということもあってか、ディーゼルノイズは小さく(ないわけではない)、ガソリン車に乗り慣れたユーザも抵抗なく受け入れることができるだろう。
わざとラフにアクセルペダルを操作しても、車体の動きは極めて穏やかであり、たぶん、助手席にいるかみさんや後席のディーラの人もそれに気づいてなかっただろう。
よく言えばジェントルなのだが、悪く言えばダル。
それでもしっかり踏み込めば、ディーゼルならではの豊かな低速トルクで力強く加速してくれるので、まあこれでいいのかな。
クラウンやレクサスGSに近いほど大きなボディサイズながらも、運転席からの各部見切りは悪くなく、ステアリングの反応もいいので運転しやすい。
ブレーキのタッチや効き具合も自然で安心感がある。
アテンザのブレーキには i-ELOOP と呼ばれる回生システムが付いていて、ブレーキ時に熱として捨ててしまう運動エネルギで発電してキャパシタに蓄電するシステムとなっている。
この電力を加速時やアイドル時の車載電装品に使うことでオルタネータの発電負荷を下げてフリクションを低減し、低燃費につなげている。
インパネはすっきりしていて見やすい。
3連メータの右側は各種インフォメーションやオンボードコンピュータ関連の表示をしてくれるようで、最近のクルマらしくいろいろ機能があるようだ。
試乗時に心残りとなってしまったのは、i-stop と呼ばれるアイドルストップの機能を試すことができなかったこと。(エンジン停止時はもちろん、復帰時の感触も試したかった)
赤信号で停止してもアイドルストップしないのは気づいていて、エアコンの設定(この日は少し汗ばむ陽気だった)のせいかと思っていたが、どうやら停止時にシフトをニュートラルにしてクラッチペダルから足を離さなければならなかったらしい。
それでも、試乗終了時にエコ運転ガイドみたいな判定では、「すばらしい運転でした」と表示されていた。
コンソール部もなかなか質感が高い。
リアシートの居住性は、身長157cmのかみさんが座ってこんな感じ。
大型セダンのリアシートなので、快適なのは当たり前か。
あと、トランクはチェックし忘れたが、これも問題ないほどの積載量であることは間違いない。
では、いつものように偏見による自己採点を。
エンジン;8点
トルクフルな新世代ディーゼルエンジンは、2000rpm で最大トルクの 420Nm を発生する。
ガソリン NA であれば 4L 以上のエンジンに相当するトルクなので、1500kg のボディを軽々と加速させる。
回転レスポンスはガソリンエンジンには及ばないが、まあ、そういう時代でもないし。
燃費はJC08モードで 22.4 km/L。
排ガスはポスト新長期規制対応。
トランスミッション;8点
さすがにこだわって新設計しただけあり、しっかり感がありシフトチェンジが楽しく感じる。
ユーノスロードスターに乗っていたときも思ったが、マツダっていい MT を造っているなと思う。
操安性;7点
車体が重いので軽快とはいかないが、反応のいいステアリングとしっかりしたブレーキで安心感を持って運転できる。
このクラスにしては脚回りはやや固いかもしれないが、そこはマツダの狙い通りなのだろう。
スポーティでいいと思う。
ちなみにホイールは19インチ!
でかいなあ...
デザイン;8点
自己主張の強いデザインは、好みが大きく分かれるかもしれない。
「雄(TAKERI)」のデザインを、よくぞここまで量産車に反映したという感じで、そこは大いに評価されるべきポイントだと思う。
日本車らしからぬ大胆さで、欧州車にも対抗できるのではないだろうか。
セダンというと、今時は「おっさんのクルマ」としてしか認知されておらず、各社とも苦戦を強いられているカテゴリーだが、アテンザは若者にも受け入れられるデザインではないかと思う。
コストパフォーマンス;4点
見る人によって評価が分かれるかもしれない。
メモリータイプナビ、ETCをオプションで付けて、車両本体価格が 323万円。
参考までに、エコカーということで、取得税と重量税が 100% 減税(免税)となる。(たぶん、20万円弱くらい)
センティア(旧ルーチェ)、ミレーニア(旧ユーノス800)なき今、マツダのフラッグシップモデルだということを考えれば納得できる価格かもしれない。
しかし、私の世代が考えるのは、このモデルのルーツはカペラであるということ。
カペラに 300万円というのは、やはりけっこう抵抗を感じる。
クラウン級のサイズのクルマだと思えば、むしろ安いのかもしれないが...
総合;35点
ほとんどの項目で満足できる性能を示しており、点数もそこそこになった。
だが、やはり私にはでかい。
クラウンサイズとなった時点で、正直なところちょっと私の対象から外れてしまう。
キャラクターがスポーティなので、ライバルとなるのは国内だとスバルのレガシィ、輸入車だと BMW 3シリーズ、アウディA4 あたりか。
デキとしては素晴らしいと思うので、絶滅危惧種である国産スポーツセダンの復活のきっかけとなってほしいものだ。
この記事へのコメント
なぜかマツダ車には、「赤」のイメージが。
エクステリアはいいと思うのですが、逆にインテリアは私にはごちゃごちゃしすぎでマイナスイメージですかね。
リッターあたり17kmと宣伝していたのに、実際はリッターあたり10km程度でしかなかった。調査をもとに、この消費者団体は去年、購入した消費者が、ガソリン代を余計に支払わされたとして、損害賠償を求めて裁判所に訴えた。
これを受けて環境保護局も乗り出した。それまでは、日本車より燃費がいいというのが売り文句だったが、実際は日本車より燃費が劣るものばかりであることが判明した。
HIROMIさん、
赤のイメージですか。
このクルマにも赤の設定はあるのですが、塗装が一層多いとかで他の色よりも+5万円となっています。
トリバンさん、
現行3シリーズとはかなり似ていると思うんですけどねえ。
特にライト周りが。
ステアリングに余計なボタンが多いんですよね、きっと。
オプションのクルーズコントロールとかも着いていたので、そういうものを着けなければもう少しいいかもしれません。
うなぎさん、
どこかの記事のコピペのようですが...
まじめに回答しますと、これは少し前に話題になっていましたね。
ヒュンダイは、訴えた消費者には、いくらか賠償金を払ったようですね。
tochiさん、らんぽうさん、kiyoさん、めぎさん、nice! ありがとうございます。
大人4人乗るにはやはりセダンだと思うのですが私も大きすぎる車は苦手です。
まだまだ狭い道路のある住宅街ですれ違いの時に非常に困るので(笑)
kuwachanさん、
日本の道路事情や駐車場事情を考えると、大きいクルマがいいとは限らないですよね。
自分のキャラクターとも合わない気もしますし。
リュカさん、
リュカさんも少し小柄なんですね。
このクルマの後席なら、ゆっくりリラックスできると思いますよ。
ソニックマイヅルさん、knackeさん、nice! ありがとうございます。
我が家はDS4を購入しました!
旦那様がYAPさんの様に文才があれば記事を書いてくれるのですが…(苦笑)
hideyuki2007yさん、
ここに来てディーゼル復権の兆しがあります。
最新の技術でクリーンになったディーゼルは、ヨーロッパでは半分くらいのシェアとなっているほどですからね。
慎太郎知事のあのパフォーマンスで槍玉に上がっていたのは旧世代のディーゼルであり、技術を理解せずに表面に見えることだけを取り上げて大騒ぎした典型的な例だと思います。
フェイリンさん、
DS4 を購入されたのですか!
エンジンは BMW&PSA 自慢の1.6L直噴バルブトロニックターボだと思うのですが、あれはいいですよね。
kumakoさん、
サイズ的には Dセグメントとカテゴライズされる大型セダンなので、広さは申し分なしです。
ただ、日本の道にはちょっと大きいですね。
ちんくろ2級さん、shin.sionさん、nice! ありがとうございます。
私は車の『顔』が気になります。
この車、顔がコワい~。特に『目』がサメのよう(^^;)
時期愛車候補☆
それにしても今回
YAPさんの記事を拝見して
ディーゼルに対するイメージや認識が
ガラリと変わりました(@_@)
大変勉強になりました♪
ありがとうございますヽ(*´∀`)ノ
大きいのもありますが、こだわり部分が男性向きですね。
それとディーゼルということにも驚きです。
今も売っているんですね。
6速マニュアル、やっぱり憧れます。が、300万以上は無理です~~。
エコカー減税対象っていうのは魅力があります。
alohaさん、
たしかに威圧感ある顔をしてますよね。
これが猛スピードで後から接近してきたら、おとなしく道を譲ってしまいそうです。
MILKさん、
ディーゼルはヨーロッパでは半分くらいのシェアがあり、あちらではどちらかというとインテリジェントなイメージで捉えられているようです。
その分、技術も日本より進んでいましたが、このマツダのエンジンで盛り返してきました。
あおいさん、
現代のディーゼルは、黒煙モクモクの古いディーゼルとはまったく別物になりました。
慎太郎知事が汚い瓶を振りかざして吠えていたときとは時代が変わりました。
koyukiさん、
日本では絶滅危惧種のMT車ですが、マツダはまだがんばってくれているほうですね。
願わくば、すべての車種、グレードで設定して選択肢を広げていってほしいところです。
ウチは大きめCセグメントですが、田舎でも厳しい道が結構あります。
Dで都会だとちょっと大変そうな気がします。
ディーゼル、日本でもイメージが変わるといいですね。
そう、Dセグメントだということを理解していれば決して高くはないんです。
けど、私の中ではこのクルマは「元カペラ」であり、今の価格は高く感じるし、Dセグメントにカテゴライズされるサイズも大きすぎると感じます。
ナツパパさん、nice! ありがとうございます。