Canon EOS 60D レビュー
新たに愛機となった Canon EOS 60D。
2年落ちの機種ではあるが、しばらく使いこんだところで、レビューをしようと思う。
そう遠くない日に次期モデルでも出てくるんだろうし、ネタとしての賞味期限があるうちに。
前にも書いたように、私がこれまで知っていた「一眼レフ」は、Canon の F-1 だった。
すべてがマニュアルの超アナログカメラ。
どうしてもこれとの比較をしてしまうのだが、ピント合わせ、露出、フイルム送り、すべてが自動の現代のカメラのなんと楽なこと!
枚数を気にすることなく思うがままにシャッターを押せるのもうれしい。
まずは特筆しておきたいのが、一眼ならではの解像感と色合い。
特に色合いは Canon らしく派手目ではあるが、たぶん見た目そのままに再現しているというよりは「自分の記憶に残った色」に近いのではないかと思う。
いつもの見慣れた景色もなんだか違って特別に写り、自分の腕が上がったかのような錯覚を持たせてくれるところがうれしい。
APS-Cサイズの撮像素子 高感度CMOSセンサのおかげで、暗いところも強いのがうれしいところ。
高性能の手振れ補正のおかげもあり、安心感がある。(7月15日修正)
私が迷っていたミラーレスの NEX-7 との最大の違いは、当然ながら光学ファインダの有無。
実は私の義兄は写真家というか写真屋というか、まあ写真で飯を食っている人なのだが、そういう人が使うプロの道具としては、ミラーレスという選択肢はないらしい。
ファインダからミラーを通して見た景色の距離感は、背面液晶や液晶ファインダでは得られないものであり、その感覚のもつ優位性はプロとして譲れないポイントらしい。
たしかに光学ファインダから見た「生」の景色は液晶で見るそれとは大きく異なり、その意見には同意できる。
ただ、我々素人からすると液晶モニタには液晶ならではのメリットもあり、その最たるものは出来上がりのイメージをリアルタイムで確認しながら撮影できるというところだろう。
光学ファインダでは、露出とかホワイトバランスは撮るまでわからないもんね。
操作系や機能の部分にも触れておこうと思う。
操作系は大きく4つの部分に分けられる。
鏡胴を挟んで上面左にモードダイヤル、上面右にはメイン電子ダイヤルとよく使う機能(なのかな?)の4つのボタン(AF, ドライブ、ISO, 測光)と現在の設定を示す液晶。
背面はボタン部と、サブ電子ダイヤル+十字キー。
上面にあるAF, ドライブ、ISO, 測光方式の4つの切替えは、そんなに使うのかなあと思いつつ...
最も自分でよく切替えながら使うプログラムシフトや Avモード時のF値の変更はメイン電子ダイヤルでできるので、これは非常に使いやすい。
他によく使うのはホワイトバランスの切替えだが、これはファインダでのぞいてもわからないので、まあいいか。
一眼ならではの設定できる部分は多くあり少々ややこしさも感じるが、Qボタンで一通りの設定にアクセス可能であり、これがけっこう重宝している。
MENUボタンで設定するメニューも、ユーザ設定ページが用意されていて、ここによく使う機能を割り当てればかなり使い勝手が良くなる。
あと、SETボタンは電子水準器に割り当てている。
こういうユーザがカスタマイズできる部分は非常にありがたい。
もっと簡単に自分の思うような設定にして撮影したいという人には、Creative AUTO モードというのが用意されている。
これは、AUTO とマニュアルの中間的な設定モードで、出来上がりの雰囲気をメニューから選べば、カメラ側で各種設定をしてくれる。
これで、同じ場面を撮り比べてみると...
「標準」
1/30, F3.5, ISO100, WBオート、シャープネス+3, コントラスト+/-0, 色の濃さ+/-0, 色合い+/-0
「くっきり鮮やかに」
1/30, F3.5, ISO100, WBオート、シャープネス+3, コントラスト+2, 色の濃さ+3, 色合い+/-0
「ふんわりやわらかく」
1/30, F3.5, +0.7EV, ISO160, WBオート、シャープネス+2, コントラスト-1, 色の濃さ-2, 色合い+/-0
「暖かくやさしく」
1/40, F4.0, +0.7EV, ISO100, WB補正A4.M2、シャープネス+2, コントラスト-1, 色の濃さ+1, 色合い+/-0
「しっとり深みのある」
1/60, F5.0, -0.7EV, ISO100, WBオート、シャープネス+3, コントラスト+2, 色の濃さ+2, 色合い+/-0
「ほの暗くしっとりと」
1/50, F4.0, -0.7EV, ISO100, WB補正B4.G2、シャープネス+3, コントラスト+2, 色の濃さ+/-0, 色合い+/-0
「明るく」
1/30, F3.5, +0.7EV, ISO160, WBオート、シャープネス+3, コントラスト+/-0, 色の濃さ+/-0, 色合い+/-0
「暗く」
1/60, F5.0, -0.7EV, ISO100, WBオート、シャープネス+3, コントラスト+/-0, 色の濃さ+/-0, 色合い+/-0
小難しい設定を考えたり試行錯誤を繰り返さなくても、このようにそれっぽい雰囲気に撮ることができる。
購入する前はそのサイズで、そのうち使わなくなって埃をかぶるようになるんじゃないかと心配していたが、今のところはそれは杞憂に終わっている。
長時間首から下げていても重さはそこまで気にならないし、大きさも意外と許容できている。
そんなネガティブな部分よりも、操作する楽しみがあり、撮影そのものを今まで以上に楽しむことができている。
この操作する楽しみを他のものに例えるなら、クルマでいえばMT車を操る感覚に似ている。
両手両足と五感を使い自分の意のままに操る、そういう悦びがある。
ここまでほめちぎってばかりだったが、ネガティブなところも記録しておく。
まず、せっかくのライブビュー機能だが、AFが遅く実用できるレベルからはかなり遠い。
これは光学ファインダで撮るときとのAF方式の違いからくる差でしかたないようだが、背面液晶を見ながらの撮影スタイルに慣れている身からすると、このトロさには違和感がある。
これはバリアングル機能を活かして本体を思いきり下げたり上げたりしての撮影時の補助機能と割り切るべきだろう。
もうひとつ、二つの電子ダイヤルと十字キーの操作感がいまいち。
なんというか、節度感が今一つで操作して気持ちがよくない。
例えば、iPhone/iPod touch/iPad のタッチパネルは、平面のパネルでありながら操作する指の動きに合わせてとてもスムースに反応する。
あの操作感を作るために、Apple は相当な開発をしたことと思う。
こういう操作することの気持ちよさを感じさせる味付けは非常に重要だ。
こういう官能的な部分は、本来は日本の製造業のほうが得意とするようなところだと思うのだが。
では、恒例の自己採点を。
性能;10点
もちろん、上には上がいるだろうが、自分の満足度の中では満点とせざるを得ない。
少なくともこれまで使用したデジカメ中では文句なし。
地味で目立たない部分だが、バッテリ性能もなかなか優秀。
いちおう予備バッテリは購入したが、やっぱり持ちがいいと安心感が違う。
機能;9点
一眼ならではの交換レンズのバリエーションで無限の可能性を秘めている。
純粋な撮影機能の他に、本体側でRAW画像を現像したり、ピクチャーエフェクトを施したり、後処理でいろいろ可能。
特に、最近流行りのピクチャーエフェクト(ジオラマ風やトイカメラ風等)を後処理で行なうのはオリジナル画像も残るのでいいアイディアだと思う。
上の「標準」で撮影した写真を「トイカメラ風」に。
同じ写真を「ジオラマ風」に。
操作性;6点
コンパクトデジカメを使い慣れている身としては、一眼のこのサイズで機動性が落ちるのは、まあしかたのないところ。
操作性に大きな不満はないのだが、電子ダイヤルや十字キーの操作感がいまいちなところは気に入らないところ。
デザイン;9点
いかにもカメラらしい形。
道具としての美しさを持っていて、機械好きの心をくすぐる。
ただ、キットレンズのEF-S18-55mm F3.5-5.6IS II 用のフードは純正品、社外品ともに残念ながらすこぶるかっこ悪い。(私が購入したのは社外品)
フォーカス時にレンズ前端が回転する構造になっているので、花形のフードがつけられないのだ...
コストパフォーマンス;9点
ダブルズームキットでポイント還元分を考慮して9万円弱。
もう少し待てばまだ下がるのはわかっていたが...
Canonの入門機であるEOS Kissシリーズとそんなに変わらないだけに、お得感はかなりある。
総合;43点
使っていくうちに気に入ってきたということもあり、かなりの高得点。
EOS Kiss X5ではダメだったかというと、撮像素子、画像処理エンジン、キットレンズが同じなので、性能的には同じはず。
そういう意味では自己満足でしかないかもしれない。
けど、そう変わらない価格で店頭に並んでいると、こっちに心が流れるよなあ。
それよりも、Kiss は新しい画像処理エンジン搭載の X6i が出たので、性能的にも価格的にもラインナップの逆転現象が起きている。
だが、デジタル一眼レフも成熟してきて、発売後2年経つがあまり色褪せてないのがうれしい。
今までに見てきた世界の美しい景色をもう一度巡ってこのカメラで撮り直したくなる、そんな気分にさせてくれる。
カメラ選びで悩んでいるという記事の中でも書いていたが、いいカメラを使えばいい写真が撮れるかというと、そういうことではないのはわかっている。
ただ、写真を撮る楽しみを改めて思い起こさせてくれただけに、初心に戻ったその気持ちで新しいお気に入りの一枚が写せるかもしれない。
次に気になってくるのは交換用のレンズ。
ダブルズームキットを購入したが、案の定、望遠側は滅多に使わない。
今のレンズの広角端は 35mm 換算で 29mm からなので、もう少し広角のレンズが欲しいところ。
ああ、こうしてこの世界にはまっていくんだなあ...
最後に、これを読んでいただいているデジタル一眼の諸先輩方にうかがいたいのですが、RAW での撮影って積極的にやられてますか?
私もときどき試しているんですけど、所謂「現像」という作業が難しくて。
いろいろと設定を変えて画が変わるのはわかるのですが、いじればいじるほど自分で撮ったときの印象や実際の景色から離れるような気がして。
散々いじって気に入るような画になっても、同時に撮影した JPEG とそんなに変わらなかったりするし。
いやあ、撮影だけでなく、こっちも難しいです...
この記事へのコメント
さすがアナログ一眼ご経験者だけあってお詳しいですね。
私は根本がわかっていないので、まだまだコンデジの延長で撮っている感じです。
せっかくですのでデジイチらしい写真を撮りたいと思っています。
レンズを交換できるのはいいのですが、いざ旅行となるとやはり重くて大変だった
というのが正直なところです^^;
旅行に持って行くとなると、たぶんメインのレンズに交換用のを一つか二つくらいが限度ですかね?
今年の夏は帰省するので、そのときに旅行時の携帯性を判断できると思います。
きむたこさん、nice! ありがとうございます。
一眼レフは重いと思って敬遠してきましたが、そうですか、
ここまで画像が違いますか。
うーむ、これは...夏のボーナス...ううう...。
カメラを撮るカメラ・・・って、その一眼レフのカメラを映しているカメラも凄い逸品なのかしら。
・・・と、こんな亜流な反応をしてしまいました。
x3には付いてないのですよ。
(※先輩ではありませんが)RAW画像はあまり撮らなくなりました。
撮った画像は結構いじる方ですが、jpgでもできますし。
そうそう、現像をしないんですよね。
前に現像したのはいつだったんだろう。
三脚にカメラを設置して、設定を変えながらの撮影ですか?
ナツパパさん、
ナツパパさんもいいものをたくさんお持ちだと思いますが、それでもちょっと物欲を刺激しちゃいましたか?
APS-Cサイズまでセンサーが大きくなると、ノイズにもずいぶん強くなりますね。
ちんくろ2級さん、
このカメラを撮っているカメラは、同時購入した PowerShot S100 という機種で、コンパクト型にしてはなかなかの性能で評判の機種です。
もうこの世界は泥沼ですよ。
luckystreamさん、
やっぱりRAWは使わなくなってきますか。
職場の同僚のカメラ好き連中に聞いても、やっぱりそんな感じです。
「失敗したくない」ってときに限定ですかね。
junkoさん、
あ、三脚使用だと思ってくださいましたか?
だとするとちょっとうれしいですね、すべて手持ちですから。
秘密はなんてことないのですが、基準となる目標物をファインダの中に決めて、そこにフォーカスの中心を持ってきて、できるだけ同じ位置になるようにしました。
ソニックマイヅルさん、とみっちさん、nice! ありがとうございます。
RAWは、赤いバラや芍薬を写すときにどうしてもその色にならない、とこぼしたときにニコンにお勤めの知り合いに勧められたんですけど、やっぱりそれでもなんだかうまくいかなくて、結局現像の手間が面倒になって、それっきりです。
そろそろカメラも勉強していかないとと思いつつ、
ミラーレスの大きさでさえ持ち歩くのがちょっと面倒になっちゃいます。
ピクチャーエフェクト、良い感じですね!
HIROMIさん、
おお、私のとおそろいですか。
ご主人のではなくてHIROMIさんがお使いのものなのですね。
あれを取説なしで使うなんてすごいじゃないですか。
機械ものが好きな私でも、けっこう最初は戸惑いましたよ。
めぎさん、
RAW現像って難しいですよね。
JPEGで思い通りの色が出ないときには、たしかに有効かもしれないですが。
もう少し使いこなすことができれば、使い方も変わってくる気がするのですが、まだまだです。
koyukiさん、
私は今のところ、まだ大きさ重さで苦にはなってないです。
今年の夏は帰省するので、そのときにどう感じるかですね。
デジイチのいいところは、イフェクトで、ジオラマ風にするとか言う機能は、つけたしで、やはり、RAW 現像が出来ると言うことですね。Canon のDPP は、良く出来たソフトです。これに、習熟されることをお勧めします。露出の変更だけでも、写真の雰囲気ががらりと変わります。
それから、いまずもがなですが、文中の「APS-Cサイズの撮像素子のおかげで、暗いところも強いのがうれしいところ。」というのは、暗いところで良く撮れるのは、高感度のCMOS であって、CMOS の大きさには、直接菅家内です。フルサイズでも、高感度のCMOS でないと、暗いところでは、良く撮れません。
YAPさんには
いろんな機種を使って貰って
レビュー書いてもらいたいです(*^^)v
お義兄さま、
写真家さんなのですね~☆
お話、合うでしょうね(*^^*)
RAW現像の件は…
私の場合は失敗できない写真ばかり
撮ってますので、全部RAWです(^_^;)
現像ソフトは3~4つ入れてるかなぁ…
それぞれのソフト
得意な事が違うので使い分けています(^-^)
テリーさん、
たくさんカメラをお持ちなのですね。
いろいろとアドバイスありがとうございます。
私が誤解していた部分は修正しておきます。
MILKさん、
なるほど、現像ソフトにも得手不得手があるのですか。
テリーさんからアドバイスいただいてますが、まずは同梱されていたDPPである程度思い通りにいじれるようになりたいです。
いろいろな方のコメントをいただいたり、会社の詳しい同僚からもアドバイスもらったりして、気楽にスナップを撮るときは自分のお気に入りになりつつある設定でのJPEGを基本とし、旅先などで絶対に失敗したくない渾身の場面ではRAW併用と、使い分けていこうと思います。
書き込み失礼します。
高校時代三年間だけ写真やってたものです。
本日たまたまカメラに無性に触りたくなって、久しぶりにカメラバッグから取り出し、あの独特のにおいとカメラの質感に浸っててネットでいろいろ調べててここにたどり着きました(^^♪
凄いレビューですねえ(*^_^*)
到底私みたいなど素人には無理でしょう。。。
私は高校時代、学校の所有物ですがCannonのEOS7sやEOS5、F-1を実際に手に取りフィルムも装填して写真撮って、暗室で現像してましたがあの時代が懐かしいです(ついに三年前の話なのになぜか遠く感じる・・・)
フィルムの枚数気にしながら写真撮る楽しさと、自分の感情をこめれる、その場にしかない感情を込める世界にどっぷりハマってました。
始めた当時はカメラを持っていなくて学校のEos5を初めて手に取って撮影してました。カラーで取れそうなとこはカラーのフィルムを装填し、入ってたモノクロフィルムを取り出し、ピッカーでべろを出してあげる。。。うーーむ懐かしい。
高校二年になった際にはEoskiss X3を購入し説明書も読まず次の日から使ってました。それから以後、撮影の度に先生の宝物といわれたEos7sを使わせていただくようになり、望遠や口角等複数のレンズを肩に担いで写真を撮ってました。
RAW現像は一時期やってました(RAW+JPEGで)。しかし、、現像もめんどくさくなりやめました(-"-)
もう今では現像の仕方も忘れました。
覚えてるのはRAWのDATAはいじってもそんなに軽く壊れない事だけです。
私はPhotoshopのエレメンツ5で編集してましたが独学なのであまり意見にはならないでしょう。。。
長文失礼しました。
これからも数えきれない数の思い出をファインダーに収めていきたいと思ってます。(*^_^*)
コメントの内容を見ると、まだお若い方のようで、これからいろいろな人生の可能性があり、楽しみな年代ですね。
私もほとんど素人であり、ようやく趣味として始めたというような感じです。
以前は、義父(かみさんのお父様、写真屋さんでした)の形見の Canon F-1 をいただき使っていたのですが、しばらく写真からは遠ざかっていました。
私もいろいろなものを写真として残していきたいと思っています。
60Dユーザーになったばかりですが、こちらの記事を見つけて勉強させていただきました。
今はなんとなくしか理解できない内容も多いのですが、試行錯誤しながら撮った後に、改めて読み直しさせていただきたい記事だと思います。
いろいろいじるところがありますから難しいですよね。
私もまだまだ初心者です。